膝を痛めてしまうと、トレーニングそのものが続けられなくなります。ここでは、年齢による関節への負担の違いと、代表的な怪我を防ぐための考え方を、整形外科的な知見にもとづいてまとめました。
なぜ、年齢によって関節を痛めやすくなるのか
膝の関節軟骨は、加齢とともに弾力性を失い、使い続けることで少しずつすり減っていきます。これは自然な変化であり、体重の増加や、もともとの関節の形も影響すると言われています。
だからといって、運動を避けるべきというわけではありません。痛みを避けて体を動かさずにいると、膝を支える筋肉(とくに太ももの前側の大腿四頭筋)が弱っていき、筋力が落ちた分、膝関節にかかる負担はかえって大きくなります。日本整形外科学会も、膝まわりの筋力を鍛えることが、膝の痛みの予防・軽減につながると位置づけています。つまり、正しく行う筋トレは、関節を守るための手段でもあります。
痛みのサインを見分ける
トレーニング中の「筋肉がきつい」感覚と、「関節が痛い」感覚は別のものです。次のサインがあれば、負荷を見直してください。
- 運動後、2時間以上たっても痛みが引かない
- 関節そのものが、ズキッと鋭く痛む
- 同じ場所が、日を追うごとに痛みを増している
これらが当てはまる場合は、その種目を一旦中止し、負荷や回数を減らしてください。痛みが続く、または強い場合は、自己判断で続けず、整形外科を受診することをおすすめします。
スクワットで膝を痛めないためのフォーム
「初期」から登場するスクワットは、正しく行えば下半身全体を鍛えられる種目ですが、フォームを誤ると膝に負担が集中します。
- つま先は、正面ではなく少し外側(15〜30度程度)に向ける
- しゃがむときは、膝から曲げるのではなく、お尻を後ろに引くように動き始める
- 膝が、つま先より内側に入らないようにする(「膝が内側に入る」状態は、膝関節に横方向の負担がかかる代表的なNG動作です)
- 体重は、つま先ではなくかかと側に意識を置く
膝に不安がある場合は、しゃがむ深さを浅くする、椅子に座る・立つ動作から始める、といった調整でも十分に効果があります。深くしゃがむことが目的ではなく、正しい軌道で行うことのほうが大切です。
年代別に気をつけたいこと
- 20〜30代:関節の耐久性はあっても、負荷を急に増やしすぎることで起こる「使いすぎ」のケガが中心です。過負荷の原則は大切ですが、月単位で少しずつ増やすペースを守ってください。
- 40代以降:関節の柔軟性や回復力が徐々に落ちてくる時期です。ウォームアップに、いつもより時間をかけてください。深くしゃがむ・大きく反るといった可動域の大きい動きは、体が温まってから行い、いきなり全力で行わないようにします。
- 既に膝や腰に痛みがある方:自己判断でメニューを組まず、トレーニングを始める前に、一度整形外科を受診してください。医師の許可を得たうえで、痛みの出ない範囲の種目(レッグプレスなど、膝を固定して行う種目)から始めるのが安全です。
ウォームアップは「怪我予防の一部」
トレーニング前に体を軽く動かしておくことで、筋肉の温度が上がり、関節の可動域が広がった状態でトレーニングに入れます。これにより、大きな力を発揮しやすくなるだけでなく、怪我のリスクを減らせることが、スポーツ医科学の分野で報告されています。
- トレーニング前は、その場足踏みやスクワットの空振り(軽い負荷でのフォーム確認)など、体を動かすウォームアップを行う
- 長時間じっと伸ばす「静的ストレッチ」は、体を冷やしてしまうため、トレーニング前ではなく、トレーニング後のクールダウンに行う
- ウォームアップの時間は、5〜10分を目安にする
まとめ
- 痛みを我慢して続けない。「筋肉のきつさ」と「関節の痛み」を区別する
- スクワットは、つま先の向きと膝の軌道を意識する
- 年齢が上がるほど、ウォームアップに時間をかける
- 持病や痛みがある場合は、自己判断せず整形外科に相談する
膝を痛めてしまうと、それまで積み上げてきた習慣が止まってしまいます。無理をしないことは、遠回りではなく、いちばんの近道です。